駒の角度の調性
駒がしっかり立っていることはたいへん重要です。弦の振動を楽器のボディに伝えるのは駒です。
駒の状態の確認をします
駒の確認はケースから楽器を取り出した時に行いましょう。まず、
(1)正しい位置にあるか確認します。
そして
(2)駒が傾いていないか(足が隙間なく接地しているか)
(3)駒が反っていないか
を確認します。
駒の位置、角度が正しい?
駒の位置や(駒の基準面と表板の)角度は楽器の状態や駒をセットした人のスタイルによって異なります。ですので、正しい駒の状態を認識できるようにしましょう。
駒の位置
駒の位置は駒の足を置く位置のことです。駒の位置設定はたいへん繊細で0.5mmずれても音が変わったりすることもあります。一般的にはf字孔の内側の切り込みの位置に張った弦が指板の真ん中に来るような位置になりますが、楽器の状態により例外の場合もたくさんあります(古い楽器などは例外の方が多いといえます)。
既に駒がセットされている状態では”f字孔の内側の切り込みの位置”と"f字孔の目の位置または指板の端のカド"をたよりに駒の位置をみると確認する頼りになります。
上下方向の位置はf字孔の切り込みの位置を、横方向の位置はf字孔の目(上の穴)または指板のカドの位置を「目印」にみます。 <<技術的な説明>>
新しく作る駒の位置は、ネックの長さ、楽器ボディの中心線、f字孔の配置、表板裏側に貼付けてあるバスバーの位置等を考慮して決めます。ですので駒をセットする時に「正しい」というか「ちょうどいい駒の位置」の判断は楽器の状態、セットアップする人の考え方によって若干異なります。異なると言ってもヴァイオリンの場合には0.5~1.0mmというようなわずかな誤差の範囲です。
ですから正しい位置の見極めは馴れないと難しいです。正しい位置がよくわからない場合は技術者に相談して正しい位置を確認しましょう。目立たないような「サイン」をつけてもらうとよいかもしれません。
駒の角度
駒の後方の面が 表板に対して直角にセットされている例駒はまず足がしっかり接地していることが重要です。先ずは駒の足に隙間がないことを確認します。
隙間がある場合は駒が明らかに傾いています。隙間がない場合でもわずかな傾きや駒の反りを起こしていることがあります。このような場合は正しい角度に戻し、起立させるのが肝要です。
駒の角度はセットした人の作りによって角度を判断する基準が異なります。大まか分類すると以下の通りです。
- 後方面側が表板に対して直角
- 前方面側が表板に対して直角
- 断面中心が表板に対して直角
基準の面を考えながら駒足と表板の接地面に隙間が無いように駒の角度を変えます。駒の足が楽器にしっかり接地していない場合は調整が必要です。基準の角度が良くわからない場合は技術者に相談して正しい駒の角度を確認しましょう。
駒が傾いている、軽く反っている場合
軽く反っている場合は指で引っ張って元に戻すことができます。下の項目の写真を参考に駒の角度を調節します。軽く反ったままを放っておくと反りはどんどん進みます。早めに修正しましょう。
駒がひどく反っている場合
ヒドく反ってしまったチェロの駒の例交換、もしくは駒に熱を加えながら力で矯正して元のように戻すことが必要です。専門の技術者に相談しましょう。
弦が通る溝
弦が駒にめり込んでしまっていると駒によって弦の振動が止められてしまいます。また、駒に弦がめり込み過ぎたり、駒と弦の摩擦が大きいと駒は弦によって傾きやすくなります。
溝は弦の直径の1/2〜2/3ほどの深さで弦は駒の曲線上に飛び出すことになります。
ヴァイオリンの例チェロの例
弦が駒に食い込んでしまった場合は駒の修正、場合によっては交換が必要になります。
駒の角度を直すーヴァイオリン、ヴィオラの場合
たいていの場合は調弦により駒は前方に引っ張られて指板側に傾くことが多いです。このような場合は以下の手順で角度を修正します。
いすに腰掛け楽器を膝の上に乗せます。
駒の足に裏側から親指を添え、表側から写真のように人差し指・中指を添えます。
親指を動かさず駒足を支え、人差し指と中指で指板側から徐々に力を加えながら後方に傾きを変えます。
駒が後方に傾いた場合は、人差し指・中指で前方より駒の足を支え、親指を後方から弦の下にくぐらせて駒上部を徐々に前に移動させます。
駒が動きづらい場合はうごかす前に弦が通る溝に鉛筆の黒鉛を塗って滑りをよくしておきます。
駒の角度を直すーチェロの場合
テーブルの上にバスタオル・スポンジシートなどを敷いて楽器を寝かせます。エンドピン側に立って駒を調整します。
前方から後方に角度を変えるとき
写真のように駒の足に裏側から親指を添え、表側から中指と薬指を添えます。人差し指で指板側から徐々に力を加えながら後方に傾きを変えます。
後方から前方に角度を変えるとき
親指以外の指を駒の前方(指板側)から駒に添えて親指を裏面に添える。親指でゆっくり力を伝えながら前方に駒を傾けます。
ページ最終更新日 : 2021-04-21