弦の交換、巻き直し
弦をチューニングしやすくセットするのはとても大切なことです。具体的には弦の巻き方になります。弦の交換はすべてのプレーヤーに必須なのでここでは弦の交換を説明します。また、使用するにつれて弦が伸びてくるとペグの角度が変わってきてチューニングするのに回しづらい角度になってしまうこともあります。そんな時は一度弦を外して巻き直すことでペグの角度を調整します。
弦を巻くに当たってこんなツールがあると便利です
用意するツール:
・4B〜9Bの鉛筆
・ペグスムーサー
・ニッパー
・瞬間接着剤
・毛抜き
2021-04-21
弦を外します
弦を交換する時は全部の弦をいっしょに緩めずに、一本ずつ交換します。
全部の弦を外してしまうと駒や魂柱が倒れてしまう恐れがあるからです。
弦の交換はすべていっしょにかえた方が効果的です。弦は張っているうちに伸びてきて伸縮性が劣化してゆきます。古い弦と新しい弦をいっしょに使うと伸縮性にばらつきが出来て、音色やレスポンスのバランスが整わなくなります。
同時に交換した弦の内一本が寿命で切れたら、そろそろ交換の時期とおもって他の弦も交換するほうがお得な効果をえられます。
ただし、ヴァイオリンのe線は例外です。
ヴァイオリンのe線は他の弦より駒にかかる力がたいへん大きく他の弦と比べて支配的だからです。また、多くは細い金属線で他の弦に比べて劣化しやすく、錆びやすい(=消耗しやすい)からです。そして何よりも、1番線は「歌う弦」なので輝きを失うと本来の状態ではなくなります。
e線は弦の状態をみて、錆びてきたり、音にノビが無くなってきたら交換しましょう。
弦を変える順番
弦を変える順番は4>1>3>2番弦の順、つまりネックに近い方からがよいと思います。ヴァイオリンならG>e>D>A、ヴィオラ、チェロならC>A>G>Dの順番です。
こうすることに寄ってペグに上をとおっている弦の位置を確認しながら弦を張ることができます。楽器によってはペグボックスの構造が狭かったり、またペグの配置の都合で巻いた弦が他の弦にぶつかり合いやすいことがあります。
巻いた弦が他の弦にぶつかってチューニングを邪魔しないようにするのはとても重要です。
ペグの状態をチェックします
摩耗してきてきたペグの例。定規を当てて光にすかすと表面の凹凸がわかる。ペグ(糸巻き)がペグ穴にしっかり合致しないと精密にチューニングするのは難しいです。しっかり合致しないとペグがまわらなかったり、すぐに緩んでしまったりします。
ペグ、およびペグ穴は弦の張力を受けながらチューニングの度に回転するので徐々に摩耗します。ペグ、ペグボックス(糸倉)の材質によっては部分的に摩耗しやすくペグのテーパー(円すい)の偏芯、ペグ穴の歪みを生じることがあります。また、木材なので経年変化で変形することもあります。
ペグボックスに良く当たっている元の方は光沢しているが、当たっていない先端側はかすかにしか触れていない。このような場合はペグ、ペグ穴を修正することが必要になります。テーパーがしっかりしていないとペグの動きを潤滑にさせるペグスムーサーを塗ってもあまり効果は望めません。
弦を外したら弦を巻く前に弦無しでペグをペグ穴に差し込んで回転させます
弦を巻かずにペグをペグ穴に入れてみます。
完全に差し込んだ状態で、もしペグにぐらつきがあったら、ペグ穴とテーパーが一致していません。
次にペグを回してみます。
回転する角度によってひっかかりがあったり、回している時にペグが穴から出入りする場合はペグに偏りがあるかペグ穴が歪んでいます。
このような場合はペグ、ペグ穴のいずれか、または両方の修正が必要です。
弦を通す穴の位置を確認します
弦を通す穴の位置を確認する。ペグを差し込んだ状態で弦を通す穴の位置がペグボックスの壁の真ん中くらいに位置にありますか?
もし、穴がどちらかの壁により過ぎていると今巻いている弦が邪魔になってペグがスムーズに動かなくなることがあります。このような場合は、ペグの弦を通す穴を開け直し画必要です。
穴が壁に近すぎると弦が詰まったり、巻いた弦がペグの回転を阻害したりする。
弦を巻く準備をします
弦を滑りやすくします
ナットの溝に黒鉛を塗り弦を滑りやすくする。ここの潤滑が悪いと弦が徐々に伸びることになりチューニングガ落ち着くのに時間がかかることがある。弦はナットと駒につけられた「溝」の上を通ります。弦を張った時にこの部分の摩擦が大きいとペグを回し終えたあとでも弦が引っ張られることになりチューニングが安定しません。ですからこの部分に4B〜9Bくらいの鉛筆の黒鉛を塗って弦を滑りやすくします。
駒の溝にも同様に黒鉛を塗る。ここの潤滑が悪いと駒が前方に引っ張られて傾いたり、反ったりする原因になる。駒の弦が通る溝についても同様です。
ペグを潤滑に動くようにします
ペグスムーサーを付けたはペグはペグ穴に挿入し回転させて穴側にも十分着ける。数回繰り返すと両者の間に適度な感じでスムーサーの「層」ができてスムーズにペグが回転するようになる。ペグの動きを潤滑にするにはペグスムーサーをペグの接点に塗ります。塗ったペグスムーサーは摩耗によるゴミや圧縮によって徐々にかたくなります。弦を交換するとき、ペグの動きがかたくなったときはペグを一度ティッシュペーパーやキッチンペーパーなどで拭いて掃除し新しくペグペグスムーサーを塗ります。
弦を巻きます
弦を巻き始めます
アジャスターのネジは長く、音程を高い方に移動できるようにしておく。 テールピースにボール、ループがついている方の端を取り付けます。アジャスターがついている場合はネジを音を高くするのに十分な余裕がある状態(つまり、ネジを長くする)にしておきます。ネジを回すのが硬い場合はネジの先にグリスをすこ〜しだけつけてネジの潤滑を良くしておきます
A線の場合、穴に通した弦の左側を最初は通す。そしてペグの弦を通す穴にもう一方の端を挿入します。
挿入した弦の端はペグボックスの底にぶつからないよう1~0mmほど穴から突き抜けるようにします。挿入したらペグを回し弦を巻き始めます。
A線の場合、穴に通した弦の左側を最初は通す。 穴から突き出た弦の端の向こう側で弦を交差させる。私は通常、最初の一巻きを弦が交差するように巻きます。こうすることで一周目を巻いた弦を2回目の巻きがしっかり押さえます。しかしながら、弦が交差させることによって他の弦にあたって邪魔になったり、ペグボックスの底にあたってしまうような場合は弦を交差させないで巻きます。
そのまま弦が交差しないようにペグに弦を巻く
私は通常、最初の一巻きを弦が交差するように巻きます。こうすることで一周目を巻いた弦を2回目の巻きがしっかり押さえます。しかしながら、弦が交差させることによって他の弦にあたって邪魔になったり、ペグボックスの底にあたってしまうような場合は弦を交差させないで巻きます。
弦がペグボックスに触れるかそのギリギリ前で落ち着くように巻く。穴とペグボックス壁の間で弦が詰まってしまうと挟まれて弦が切れる原因になる。重要なのは、
・弦を二重、三重に交差させて巻かない(音程の変化が連続的でなくなったり、弦を噛んでペグがまわらなくなったりする)
・弦を詰まらせたり、他の弦に邪魔しないように巻く
ことです。
最後に弦がペグボックスの壁に触れるかギリギリの位置にもって行きます。
ヴィオラ/チェロの場合の注意
ヴァイオリンの場合は楽器ごとに本体、振動弦長の差が少ないのでメーカですでにほぼ適した長さで弦が作られていますが、ヴィオラやチェロの場合楽器によって寸法が大きく異なり弦の余分が長過ぎることが多いです。その場合は適度に余分な弦を切って弦がつまらないように気をつけます。
ペグボックの形状、ペグの配列は楽器によって様々です。都合で弦の巻き方を工夫しなくては行けないこともしばしばです。問題があある場合は専門の技術者に相談しましょう。
ペグの角度を調整します
すべての弦をチューニングします
基準のラ(LA、A)の音をとってすべての弦をチューニングします。
チューニングは音を低い方から高くしながら目標の音程にあわせます。つまり張力を上げながらです。音の高い方から弦を緩めながらあわせると音程が安定するのに遅延があります。必ず低い音程から張力をあげながらチューニングしましょう。
親指と人差し指で弦を横に押しのばす。これを弦の長さ方向に対して上下に移動させながら連続的に行う。どんな弦でも弦は徐々に伸びて張力が安定するのにいくらか時間がかかります。特にガット弦の場合は最初に伸びる度合いが大きいので安定するまでに時間がかかります。ですので最初に”マッサージ”をして弦をほぐしてあげると早く安定します。
チューニングしやすい状態にペグの角度を調整します
ペグボックスの「頬」に対してペグが平行だとペグが回しづらい。ヴァイオリン、ヴィオラの場合、楽器を構えながらチューニングするのでペグの角度によっては左手でペグを回転させづらくなります。常にチューニングしやすい場合を保つために弦の長さを切って調節します。
上の写真のようにペグが回しづらい位置にあったら一度弦を緩めて弦の先端を取り出します。弦のニッパーで2~3mmくらい弦の先を切ります。
切ったら弦に巻いてある糸がほつれないように瞬間接着剤をわず〜かにつけて糸をブロックします。
接着剤が乾いたらもう一度弦をペグに巻いてチューニングします。一度曲がった弦がうまく穴を通らない場合は毛抜きを使って作業するとラクです。毛抜きを使うとペグ穴を突き出る弦の長さを調整しやすいので突き出た弦の余分の長さでもペグの角度を調整することができます。
ペグの角度が丁度良くなるまでこの操作を繰り返します。
ペグボックスの右側と左側で若干感覚がことなりますが、だいたいペグボックスの「頬」に大して90°から前方に20°くらいまで傾けてあると楽器を構えた状態でチューニングしやすいです。
ページ最終更新日 : 2021-04-21